【塾生Blog】ヒロシの読書感想文 「真実の瞬間」

こんにちは
先日、塾長にお勧めしていただいた「The Third Door」を事務局長に貸していただけることになりまして。
それが手元に来るまでの間、週末のお供のために事務局長がたまたま持っていた本を代わりに図々しくもせしめました。事務局長ありがとうございます。


「真実の瞬間」SASのサービス戦略はなぜ成功したか
ヤン・カールソン 著
堤猶二 訳

スカンジナビア航空のサービス戦略を成功させた軌跡の本です。
例によってご存知の方も多いかと思うのですが、私はスカンジナビアが正確にどこを指すのかもよく分かっていませんでした。

今回の本の表題にもなっています、「真実の瞬間」
サービス業従事者が、実際に顧客と接する最初の15秒間のことだそうです。
その15秒間が、その会社全体の印象を決める瞬間とのこと。非常に良く解ります。
若輩ではありますが、20年あまり接客、サービス業で生きてきた自分にはよくよく刺さる話です。
しかしながら流石はスカンジナビア航空(今日知りましたが)玄関と水周りを綺麗にして、愛想良くしましょうというレベルのお話ではありませんでした。

本の中で随所に書かれているのは、今ある階層的組織機構を逆転させるということ。
顧客のニーズを一番良く知っているのは、最前線で接客に当たる階層的には最下部にあたる従業員で、サービス内容の決定権を持っている上位の従業員はニーズから最も遠いところにいるのだと。
したがって最高のサービスを提供するには、実際に接客をしている従業員に判断する権限と責任を持たせるというもの。
そうすることで、最前線の従業員は目的のため自らアイディアを出し、実行し、それによって得られた顧客満足に充実感を、仕事に誇りを覚えるのだと。
実際働いてきた経験から、本当はこうして差し上げたいのですが自分の裁量ではそれを出来ません。仰る事は分かりますしそうして差し上げたいのですが、上司の許可が必要なんです。といった事案は現場に良く転がっている話で。
店員さんの機転でこんなことをしてくれたからまた来たい、通いたい。なんて美談もよくある話です。
みんな本当はそうゆうことを知っているはずだと思うのですが、実際のところ決定権を現場に託す会社はあまり見たことがありません。
自分の考えて行動した結果、他人が喜んでくれる。
綺麗ごとに聞こえるかもしれませんが、仕事とはいえこれ以上に必要なことがあるでしょうか?

スカンジナビア航空では、それらは理性的に計画的に行われたそうです。
責任と決定権を与える前提に、社としての戦略や方針、とにかく情報を。
「情報をもたない者は責任を負う事はできないが、情報を与えられれば責任を負わざるを得ない。」
本編冒頭のヤン・カールソンの言葉です。
リーダーシップをとるということは、情報や責任、決断する権限を与え、その人の秘めた力を引き出すことなのだと。


読み進めるうちに自分が衝撃を受けたところがありまして。
新型航空機を求めてボーイング社を訪れるエピソードがあるのですが、顧客のニーズを汲んだより快適な客席を持つ航空機を求めたところ、全ての旅客機は客席の快適さよりも技術革新に主眼を置いているためにそういう航空機は無いとの回答がきまして。
航空機メーカーにとっての顧客は、航空会社の経営幹部であり、彼らの興味は最新技術であるためニーズに応えた結果こうなるのだと。
しかしながら、スカンジナビア航空にとり顧客とは、実際に料金を払って搭乗する人たちのことであると。
航空機に限らず、全ての商品において顧客とは末端消費者に帰結するのだということは、言われれば理解できるし考えれば分かるのですが、全ての起点をそこに合わせて実際に仕事をするのは言うほど簡単ではないのだな、と。
エンドユーザーとか色んな言い回しをして勉強するものの、そもそもの原点よりもついつい開発したシステムや製品、保有している機材を活用しなければという企業本位の活動にどうしても引っ張られやすいのではないかと。

挙げればきりがないですが、他にも感嘆する箇所は多くありました。
同じサービス業という目線から見ても、感じるところの非常に多い本でした。


こと企業を経営するということに関し、先日読みましたジェームス・スキナー「史上最強のCEO」のニーズの汲み方、リーダーシップの取り方、組織の作り方、非常に共通する部分が多かったように思います。
その部分を掘り下げた一冊というか、時系列的にはそれらも基になってまとめ上げたのがジェームス・スキナーなのか

本書を読んで一番驚いたのは、この本が発行されたのが1990年。
30年前ということです。
30年!!
手元にあるのは15年後に増刷された43刷目。
大変売れたのでしょう。
30年経って尚、大手外食産業は幹部が考えたというだけの理由で、部下は不味いと思いながら商品を売り出し
大手飲料メーカーはニーズを創り出すことに躍起です。

30年前に組織のピラミッドを逆転させて成功した会社があり、昨年末にそのような組織を作るのがいいと書いた本が出版されている。
30年前に現行に不満を抱いているニーズを汲み取り成功した会社があり、昨年末に商品よりもニーズに意識を向けろと書いた本が出版されている。

最近ではAmazonが顧客のニーズを自動的に(精度はともかく)決めてくれる時代にすらなってきましたが、根底に横たわるものは普遍なのでしょうか?
ミルクティーの底に沈んでいる、黒くてムニムニした甘い粒粒をニーズと呼ぶのでしょうか?
その向こう側にあるものは、もっとシンプルなものなのでしょうか?

ちょっと本2冊読んで数日考えた程度で分かるならもう自分で起業した方がいいって話で。
これからも勉強ですね。

長い乱文を最後までありがとうございました。
皆様の貴重な時間のためにも、読みたくなる文章センスも身につけていきたいと思います。

ヒロシ

 

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今回レビュー頂いた本のご紹介
 「真実の瞬間」SASのサービス戦略はなぜ成功したか
 ヤン・カールソン 
 https://www.diamond.co.jp/book/9784478330241.html
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